カテゴリー別アーカイブ: 本

つきのふね

つきのふね (角川文庫)
つきのふね (角川文庫)
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森 絵都
角川書店

文章を書くとき、いつも書き出しの文章と締めの文章で悩む。書きたい内容が決まっても、どのように書き出してそこへ繋げていくのか、どのようにそこから結ぶのかは決まらないからだ。取れる選択肢が多くて、悩む。

小説を書く人も当然それを心得ていて、良い文章を書く人は、書き出しや結びも思わず唸るような文章を書く。

「つきのふね」の結びの文も唸るような一言だった。結びの言葉自体にも素直に感心したが、それ以上にその言葉を発するきっかけとなったあるモノに感心した。それはそのモノが、さかのぼってある行為にまで辿り着くからだ。(その繋がりに深い意味は見いだせなかったが。)

同じモノ、あるいは同じ場所が上手く使い回されていることは、それ自体が驚きを生むものだ。それに加えて結びの一言に上手く繋げているのだから、見事である。読み終えた瞬間の爽快な気分。

生物と無生物のあいだ

面白い。知的好奇心を刺激されること請け合い。

帯に30万部突破と書いてある。この本が発行されたのが4年前だから、今はもっと売れているだろう。なんと言ってもタイトルがいい。生物と無生物のあいだ。タイトルだけで興味をそそられる。両者を隔てるものはなんなのだろう?なんと言っても私たち自身が生物だから、気になる気になる。

本書は一般向けの読み物だ。それはこの本の構成からも分かる。本書には、生物に関しての科学的解説だけが書かれているのではない。生物に関する各種テーマについて、以下のような要素で構成される。

・科学的解説
・研究にまつわる人間模様のドラマ
・科学現象を比喩で表現した描写
・生命とは、についての著者の考え

科学的解説に飽きてきた頃合いを見計らって、人間ドラマが始まったり比喩描写が始まったりするので、読んでいてダレない。なかなか上手い構成だ。だけどどこかで同じような流れに触れたことある気がするなと思って記憶を辿ってみると、「フェルマーの最終定理」に形式が似ているのだと思い当たる。あちらもよく売れたようだし、理系ものはこの形式が一般によく受けるのかもしれない。

内容は興味深かった。生物に関する知識は、DNAの2重らせん構造をテレビの映像で見たことはあるがその構造の意味するところは理解していない、というレベルだ。そのような人にとってとても楽しめる内容になっていると思う。

さて、自分用のメモのために特に印象に残った箇所を挙げていく。(長いです。)

DNAに関して。DNAは単なる文字列ではなく必ず相補的に対構造をとって存在している。それは情報の安定を担保する機能を持ち、自ら全体を複製する機構を担保する。また、DNA文字が四種しかないが故に突然変異や進化が起こりやすい。などの話。

生命とは自己複製を行うシステムである。

たった四種しかないDNA文字が、新たな変化の可能性までをも、そのシンプルさゆえに容易に生み出しうる

生命の身体は、原子に比べてなぜこれほど大きいのか。それは生命現象に必要な秩序を上げるために必要だから、という話。

このような例外的なふるまいをする粒子の頻度は、平方根の法則と呼ばれるものにしたがう。

粒子の数が増えれば増えるほど、平方根の法則によって誤差率は急激に低下させうる。

我々を構成する分子は留まることなく入れ替わっていて、一年ほどで全身の分子が入れ替わってしまう、という話。

生命体はたまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい淀みでしかない。しかもそれは高速に入れ替わっている。

エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。

生命とは、動的平衡にある流れである

タンパク質のかたちが体現する相補性がもたらす効果について。かたちの相補性については、ジクソーパズルのピースがお互いに合うピースを一意に決定することを例に挙げて解説している。

あるタンパク質には必ずそれと相互作用するタンパク質が存在する。二つのタンパク質は互いにその表面の微細な凸凹を組み合わせて寄り添う。

なぜ生命は絶え間なく壊され続けながらも、もとの平衡を維持することができるのだろうか。(中略)生命はその内部に張り巡らされたかたちの相補性によって支えられており、その相補性によって、絶え間ない流れの中で動的な平衡状態を保ちえているのである。

システムの構成要素そのものが常に合成され、かつ分解されることによって担保される重要な生物学的概念がある。それは合成によって緩やかに上昇し、分解によって緩やかに下降するという一定のリズムを連続的に発生することによって振動子を作り出すことができる、(中略)このような信号の増減は、細胞にとって環境の変化を捉えるセンサーとして働く。

細胞の内部から外部へ物質を分泌する際の仕組みについて。

内部の内部は外部である。

細胞は自分自身の内部に別の内部を作ってそれを外部とした。このような区画分けはそれだけで秩序の創出となる。区画の内外で、別々の環境を作り出し、それぞれ個別の反応や活動を営むことができるからである。

生命を語る上で欠かせない、時間との関わりについて。

私たちの生命は、受精卵が成立したその瞬間から行進が開始される。それは時間軸に沿って流れる、後戻りできない一方向のプロセスである。

機械には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品を抜き取ったり、交換することができる。(中略)生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。

まほろ駅前多田便利軒

読んでいて気持ちのいい文章。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん
文藝春秋

優れた作家の文章は、その文章をつらつらと読むだけで心地よい。その文章が会話であっても、情景を描いていても、心情を描写していても。

はっとする言葉がちりばめられている。

思わずペンで線を引いてしまうような文を、あちこちで見つける。おぉグッとくる言い回し!と心の中で何度呟いたことか。

針が飛びまくる傷だらけのレコードに相槌を打つみたいで、

鉋は時を削る道具だ。刃をあてて引くたびに、時間の澱が薄くはぎ取られ、

北村の声は、なぜ空は青いのと聞く子供みたいに明朗だ。

さて、そんな著者の言葉で紡がれるまほろ駅前多田便利軒は、お話も抜群に面白い。

この話のテーマは、取り返しのつかないことやどうしようもできないこととどう向き合うべきか、親子の関係とはどういうものなのか、の二点だと思う。前者は主人公が抱える問題として、後者は主要登場人物のエピソードとして語られる。

それらのエピソードは9つほどあり、よくよく整理してみれば全て親子あるいは飼い主と飼い犬についての話が絡んでいた。血の繋がった普通の親子はことごとく問題を抱えているのに対し、血の繋がっていない親子はみんなそれぞれの幸せを形作っているという、極端な描き方でテーマを伝えようとしている。とは言いつつなんとなしに読んでいるときは便利軒のドタバタエピソードとして楽しめているのだから、見事だ。

テーマについての答えはもちろん用意されている。

テーマ1は、完全に元通りにはならなくても、再生する道筋はある、という励ましとして。テーマ2については、血のつながりが大事なのではない、という励ましと戒めとして。

最後に、最もグッと来た言葉。

「はるのおかげで、私たちははじめて知ることができました。愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」

鋼の錬金術師

最後まで読んだ。

見事だった。面白かった!

どうやって決着つけるのかと思ってたけど、
そういう形での「等価交換」とは。
なるほどね。納得した。

一時期は間延びしたなんて話も知人の間でしてたけど、
一気に読んでみれば脇道にそれることもなく、
一貫したテーマで筋の通った話になってる。

調べるまで知らなかったけど、作者は一児の母とのこと。
これを女性が描いたのか!と驚くと同時に、
扱っているテーマや、
ラストのラストをああいう形で締めたことを考えると腑に落ちる。

てな感じで素晴らしい作品。
今回は時間が無いけど、一度じっくり分析してみたいな。

日本は世界5位の農業大国

日本は食糧自給率が低い国だからなんとかしないといけない!と騒がれているけど、実際はそうでもないという話。

というより農業が稼ぎ出すGDPは世界第5位であり、なかなかの農業大国だという。

それなのになぜ自給率が低くなってしまうのかというと、巷で言われている「自給率」が「カロリーベースの自給率」であるところにトリックがあるからだ。(ここではそのトリックの詳細は省くが、同じ指標を採用しているのは世界中探しても日本だけ、という事実からみてもこの指標がおかしいことが分かるだろう。)カロリーベースの自給率を用いることで日本政府は意図的に自国の農業を弱く見せ、その対策のための政策を行っている。そしてそれは農水省の利権につながる、というのが著者の主張だ。

間違った前提の上で取られる対策は、迷惑この上ない。その対策は無駄になるどころか、健全な状態を乱してしまいかねない。実際、自給率向上のために補助金で生産性の低い中小農家を支援した結果、不当な価格競争により優良な農家を圧迫する事実があるようだ。しかもその対策の費用は税金から出ていると考えると、ますますげんなりする話だ。

残念な話が多いが、若くて優秀な大規模農業経営者が日本でも育ってきているという明るい事実も書かれてある。ヘンテコな政策に負けじとよい農業の形が日本に広がっていきますように。

ウェブで儲ける人と損する人の法則

ネットでPVを取ったり、ネット広告で成功するために把握しておくべきことが雑多に色々書かれている。

ウェブで儲ける人と損する人の法則
中川 淳一郎
ベストセラーズ

 

 

 

ネットで流行っていたり話題になっているものはテレビが発のものが多くテレビとの親和性が高いという指摘や、ヤフーニュースに取り上げられるとリンク先のサイトのサーバーがよく落ちるヤフーアタックの話など、単純に面白い内容も多い。

ネット向きの商品があるらしい。ネットで話題が広がりやすい商品、つまりPVを稼いだり、コメントを多くもらえたりしやすい商品のことだ。それは、親しみやすく、よく目にする商品。安くて、コンビニで買えるものが多い。具体的には、納豆、チロルチョコ、ガリガリ君、マクド、ユニクロ、など。

ネット文脈という考え方がある。対義語は新聞文脈。ネットでウケる内容のことを、ネット文脈にあっていると言う。

その内容は、
・ユーザー本位のもの
・クリックしたくなるもの
・広げたくなるもの
具体的には
・週刊誌ネタ
・B級ネタ
などがそうだ。

テレビが視聴率を稼がなくてはならないように、ウェブにもPVを稼がなくてはならないサイトがある。そのようなサイトには週刊誌ネタが多くなりやすくなるのだろう。

一方で専門性が高く有益な情報は、PVを稼ぐ必要がないサイトや個人が担う傾向にあるのかもしれない。

人間の建設

何を言ってるのか分からない、というのが大半だった。

 

人間の建設 (新潮文庫)

人間の建設 (新潮文庫)

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小林 秀雄 岡 潔
新潮社

 

 

 

 

気になった箇所。

赤ん坊にはまだ時間というものはない。だからそうして抱かれている有様は、自他の別なく、時間というものがないから、これが本当ののどかというものだ。 ・・・ 世界の始まりというのは、赤ん坊が母親に抱かれている、親子の情は分かるが、自他の別は感じていない。時間という観念はまだその人の心にできていない。

ひとつ上のアイデア

主に広告業界のクリエイター20人が、それぞれのアイデアの出し方について書いた本。

 

ひとつ上のアイディア。

ひとつ上のアイディア。

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眞木 準
インプレス

 

 

 

 

一冊に20人分の原稿が入っているので、一人あたりの内容は短く、したがって深い話にはなりにくい。一方で短い原稿の中で言いたいことを言う必要があるため、伝えるべき内容はコンパクトにまとまっていて把握しやすい。

この本としてまとまった意見があるわけではないが、各人の話からところどころ参考になりそうな箇所を見つけることができる。

気になった話を抜粋。

・サイコロを6回回転させて考えを展開させる。
・3回3ラウンド紙に全て書く。
・成功したゴールイメージからさかのぼって考える。
・誰でも考えることを見事にやってのける。
・自分の中にあるものをノートに全て書く。さらにそこから連想したことも書く。
・本質をもう一度問い直す。「本当に?なぜ?」
・アイデア会議は持ち寄りだけ。
・人にどう感じてもらいたいかを考える。
・最も重要で大変なのは、問題点を見つけること。
・自分の趣味、興味を打ち出したものはオリジナリティがある。

共通して言っていることがあり、特に重要かもしれない。
・とにかく書き出すこと
・完成をイメージすること

永遠の0 (ゼロ)

若い日本人はみんな読んだ方がいいと思う。

 

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

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百田 尚樹
講談社

 

 

 

 

夢中になって読んだ。この小説のすばらしいところは、こんなに読ませる小説でありながら、私たちが知っておくべき過去の日本について教えてくれるところだ。

永遠の0のゼロとは、零戦のゼロ。太平洋戦争での、ある特攻隊員の話だ。読み終えて、背筋が伸びた。