生物と無生物のあいだ

面白い。知的好奇心を刺激されること請け合い。

帯に30万部突破と書いてある。この本が発行されたのが4年前だから、今はもっと売れているだろう。なんと言ってもタイトルがいい。生物と無生物のあいだ。タイトルだけで興味をそそられる。両者を隔てるものはなんなのだろう?なんと言っても私たち自身が生物だから、気になる気になる。

本書は一般向けの読み物だ。それはこの本の構成からも分かる。本書には、生物に関しての科学的解説だけが書かれているのではない。生物に関する各種テーマについて、以下のような要素で構成される。

・科学的解説
・研究にまつわる人間模様のドラマ
・科学現象を比喩で表現した描写
・生命とは、についての著者の考え

科学的解説に飽きてきた頃合いを見計らって、人間ドラマが始まったり比喩描写が始まったりするので、読んでいてダレない。なかなか上手い構成だ。だけどどこかで同じような流れに触れたことある気がするなと思って記憶を辿ってみると、「フェルマーの最終定理」に形式が似ているのだと思い当たる。あちらもよく売れたようだし、理系ものはこの形式が一般によく受けるのかもしれない。

内容は興味深かった。生物に関する知識は、DNAの2重らせん構造をテレビの映像で見たことはあるがその構造の意味するところは理解していない、というレベルだ。そのような人にとってとても楽しめる内容になっていると思う。

さて、自分用のメモのために特に印象に残った箇所を挙げていく。(長いです。)

DNAに関して。DNAは単なる文字列ではなく必ず相補的に対構造をとって存在している。それは情報の安定を担保する機能を持ち、自ら全体を複製する機構を担保する。また、DNA文字が四種しかないが故に突然変異や進化が起こりやすい。などの話。

生命とは自己複製を行うシステムである。

たった四種しかないDNA文字が、新たな変化の可能性までをも、そのシンプルさゆえに容易に生み出しうる

生命の身体は、原子に比べてなぜこれほど大きいのか。それは生命現象に必要な秩序を上げるために必要だから、という話。

このような例外的なふるまいをする粒子の頻度は、平方根の法則と呼ばれるものにしたがう。

粒子の数が増えれば増えるほど、平方根の法則によって誤差率は急激に低下させうる。

我々を構成する分子は留まることなく入れ替わっていて、一年ほどで全身の分子が入れ替わってしまう、という話。

生命体はたまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい淀みでしかない。しかもそれは高速に入れ替わっている。

エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。

生命とは、動的平衡にある流れである

タンパク質のかたちが体現する相補性がもたらす効果について。かたちの相補性については、ジクソーパズルのピースがお互いに合うピースを一意に決定することを例に挙げて解説している。

あるタンパク質には必ずそれと相互作用するタンパク質が存在する。二つのタンパク質は互いにその表面の微細な凸凹を組み合わせて寄り添う。

なぜ生命は絶え間なく壊され続けながらも、もとの平衡を維持することができるのだろうか。(中略)生命はその内部に張り巡らされたかたちの相補性によって支えられており、その相補性によって、絶え間ない流れの中で動的な平衡状態を保ちえているのである。

システムの構成要素そのものが常に合成され、かつ分解されることによって担保される重要な生物学的概念がある。それは合成によって緩やかに上昇し、分解によって緩やかに下降するという一定のリズムを連続的に発生することによって振動子を作り出すことができる、(中略)このような信号の増減は、細胞にとって環境の変化を捉えるセンサーとして働く。

細胞の内部から外部へ物質を分泌する際の仕組みについて。

内部の内部は外部である。

細胞は自分自身の内部に別の内部を作ってそれを外部とした。このような区画分けはそれだけで秩序の創出となる。区画の内外で、別々の環境を作り出し、それぞれ個別の反応や活動を営むことができるからである。

生命を語る上で欠かせない、時間との関わりについて。

私たちの生命は、受精卵が成立したその瞬間から行進が開始される。それは時間軸に沿って流れる、後戻りできない一方向のプロセスである。

機械には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品を抜き取ったり、交換することができる。(中略)生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。

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