貝と羊の中国人

新書って、とりとめがない。


単行本と違い、悪く言えばきちんとまとまってないことが多い新書だけれど、とりとめがない故に著者の知識がより生に近い形で伝わってくる。単行本に載せるには弱い知識もたくさん載っていて、場合によってはそういう知識の方が興味深いなんてこともままあったりする。

この「貝と羊の中国人」もそんな新書だった。
題名の貝と羊とは、要するに中国人はホンネの貝の文化とタテマエの羊の文化を使い分けているという話で、その話も面白いけど、その他の方が興味深い話が多い。

中でも特に印象深いのが無私物の範囲に関する話で、その話を東シナ海の日中中間線におけるガス田開発のいざこざに当てはめると、あぁ中国人はあれを悪いとはほとんど思ってないんだなって(笑)。所有が明確でないものを自由に使うのは当然のことと考えるらしい。
些細な考え方の違いがあんな大きな問題にも現れてくるんだから面白い。

中国人の気持ちが、少しだけ分かったような気になれる本。

その他、気になった話を覚え書き

? 文明国は、二つの異質な集団がぶつかり合ったのが起源、という例が多い
? 中国人の最大の強みは、秘密結社や互助組織など、ネットワーク作りの巧みさにある
? 中国人の恩義は、代償を求めるか否かで「功」と「徳」の二種類に区別される
? 中国の歴史は、人口激増、生産不足による困窮、王朝滅亡、の繰り返し
? 世界史では、強力な創業型リーダーはしばしば「社会の周辺」から出てくる
? 三千年近く、中国の歴史の黒幕は「士大夫」という層だった
? 中国の民衆は、仰ぎ見るヒーローを渇望すると同時に、徹底的に憎める悪役を必要とした
? 中国の国防において致命的な急所は、北京
? 中東を除くアジア二十一カ国のうち、国名に理念名称を拒絶するのは日本だけ
? 戦後の日本人は、自国を太古の昔から存在する自然国家であると思い込むことでナショナリズムを抑制し、中国人は自国を革命と共産主義による人工国家と思い込むことで、ナショナリズムを発揚してきた
? 近代的な国民国家を建設するためには、ナショナリズムを必要とする
? 世界史上、西欧文明だけが世界文明になれた主因は、内外に競合的協力者(発展を継ぐもの)がいたから
? 日本人の日本らしさは儒教から来ている一方、近代中国人も日本を通して近代西洋の思想を学んだ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*